「子供を現地の学校に入れたら、すぐに馴染んで言葉もペラペラになるはず…」 海外駐在を前に、そんな期待を抱いている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現実は想像以上に厳しいこともあります。
我が家はフランスに駐在中(2020年~年)、3人の子供たちを現地の学校に通わせました。期待と不安の中で始まった現地校生活でしたが、すぐに「学校に行きたくない」という涙ながらの訴えに直面することになったのです。
この記事では、年長・年少・年少前の3人の子供たちがフランスの現地校で実際に経験した「言葉の壁」や「友達作りの難しさ」、そして親として悩みながら実践し、効果があった具体的なケア方法5つを、リアルな体験談として共有します。今まさに同じ悩みを抱えている方、これから駐在を控えている方の不安が少しでも軽くなれば幸いです。
子供たちが直面したリアルな壁:年齢別ケーススタディ
よく「子供はすぐに適応する」と言われますが、子供の性格や年齢、環境によってその壁の高さは全く異なります。我が家の3人のケースをご紹介します。
ケース1:長女(年長 / MSクラス)- 「一緒に遊んでくれない…」涙の理由
年中(MS)から現地校に入学した長女。通い始めて間もなく、「学校に行きたくない」と泣くようになりました。理由を聞くと、「周りの子が一緒に遊んでくれない」「誘っても断られる」とのこと。
先生も気にかけてはくれますが、日本の幼稚園のように先生が積極的に遊びの仲介をしてくれるわけではありません。結局、子供自身がコミュニケーションをとって関係を築くしかないのです。
当たり前ですが、子供同士の関係構築には「言葉」が不可欠。「一緒に遊ぼう」「今はやりたくない」「これがしたい」「あれをやろう」といった簡単な意思表示ができないため、クラスに馴染むまでに相当な時間がかかりました。毎朝、「明日も学校に行かなくちゃダメ?」と聞かれる日々は、親としても本当につらかったです。
ケース2:長男(年少 / PSクラス)- プライドとマスクが壁に
年少(PS)ならもう少しスムーズかと思いきや、長男も苦戦しました。彼のネックとなったのは、本人のプライド。「同級生からフランス語を学ぶ」ということを、素直に受け入れられなかったのです。
さらに当時はCovid-19の影響で先生がマスクを着用しており、口の動きを見て学ぶ機会が子供同士のやり取りに限られていました。先生との面談でも、家庭での協力を求められましたが、本人の強いこだわりを変えるのは難しく…。
家で発音練習を手伝ったり、友達とのコミュニケーション用に絵カードを作ったりしましたが、2年間過ごしても「いじめられるから行きたくない」と言うことがあります。先生に相談しても、いじめというよりは、言葉が分からないことによるすれ違い(相手は誘っているのに、本人は追いかけられていると感じるなど)が続いている状況です。今も向き合い続けている課題です。
ケース3:次男(年少前 / TPSクラス)- 言葉以前の「登園拒否」
フランスには年少クラスの前に、プレ幼稚園のようなTPS(Très Petite Section)があります。次男はここからスタートしました。
この年齢だと、言葉の問題以前に、「親と離れることへの不安」が大きな壁となりました。幼稚園に着くと、全力で泣き叫び、物を投げ、服を脱ぎ捨て、お漏らし…お昼寝もまともにできません。もちろん、フランス語の指示が理解できないことも影響していたと思いますが、とにかく毎日が戦いでした。
日本でも年少さんで登園しぶりをする子はいますが、異国の地でのそれは親にとっても精神的にこたえます。通い始めて1年経ってもフランス語の理解は十分ではなく、仲の良い子とは遊べているものの、「1年もすればペラペラ」という言葉が、いかに子供によるか、そして我が家には当てはまらなかったかを痛感しています。
もう限界?と思った時に試した!効果のあった子供へのケア5選
正直、「いっそ単身赴任に…」「日本人学校がある地域なら…」と何度も考えました。それでも「もう少し頑張ろう」と踏みとどまれたのは、試行錯誤の中で少しずつ効果が見られたケアがあったからです。特に効果的だった5つの方法をご紹介します。
1. 意思疎通の第一歩「絵カード」
【どんなもの?】
トイレ、水筒、お腹が空いた、頭が痛い、などの基本的な要求や状態を示す絵と、対応するフランス語を書いたカードです。
【なぜ効果的?】
言葉が全く話せない初期段階でも、先生や周りの子に最低限の意思を伝える手段になります。「これを見せれば伝わる」という安心感が、子供の不安を少し和らげてくれました。先生との簡単なコミュニケーションのきっかけにもなります。
【実践のポイント】
ラミネート加工しておくと丈夫で長持ちします。子供が自分で指差しやすいサイズで作りましょう。我が家では1ヶ月ほどで不要になりましたが、初期の精神的な支えとして非常に役立ちました。
2. 小さな成功体験を「毎日のご褒美と承認」
【どんなもの?】
「今日も学校がんばったね!」と具体的に褒めること。そして、夕食後にささやかなデザートを用意するなど、目に見える形での「お疲れ様」を用意しました。
【なぜ効果的?】
毎日つらいことばかりだと、学校へ行く気力がなくなってしまいます。「頑張ったら良いことがある」「パパやママは見てくれている」という認識が、翌日へのモチベーションに繋がりました。小さな成功体験(学校に行けたこと自体)を積み重ねることが大切です。
【実践のポイント】
慣れてくると「ご褒美」の効果は薄れるので、我が家では「金曜日は好きなデザートOK、平日は簡単なもの」のように変化をつけました。褒めるときは、具体的に「〇〇ができたね」「挨拶がんばったね」など、行動を認めるとより効果的です。
3. 心の声を聴く「対話の時間」の重要性
【どんなもの?】
毎日、寝る前などに「今日、学校で嫌なことはあった?」「何か良いことや楽しかったことは?」「明日、何か楽しみなことはある?」と聞く時間を作りました。
【なぜ効果的?】
子供が何に困り、何を感じているのかを具体的に知ることは、サポートの第一歩です。特に、言葉が通じない環境での出来事は、親が想像する以上に複雑で、子供も上手く説明できないことがあります。じっくり話を聞くことで、子供は「分かってもらえた」と感じ、安心感を得られます。
【実践のポイント】
「嫌なこと」を聞くだけでなく、「良かったこと」「楽しみなこと」もセットで聞くことで、少しでもポジティブな側面に目を向けるきっかけを作ります(我が家では「明日の給食」が楽しみの定番でした)。子供の話が事実か確認が必要な場合は、先生に連絡しますが、先生によっては温度差があることも覚悟しておきましょう。その場合は、根気強く校長先生などに相談する必要も出てきます。
4. 安心感を与える「お守りのぬいぐるみ」
【どんなもの?】
子供が気に入っている小さなぬいぐるみやキーホルダーを、お守りとして持たせるようにしました。
【なぜ効果的?】
慣れない環境で、触れると安心できる「いつものもの」があることは、子供にとって大きな心の支えになります。特に、親と離れている日中の時間、不安を感じた時に、そっと触れるだけでも気持ちが落ち着くことがあります。
【実践のポイント】
学校によっては持ち込みが禁止されている場合もあるので、事前に確認が必要です。紛失や破損のリスクもあります(実際にキーホルダーを引きちぎられたことも…)が、子供の精神安定を優先しました。壊れても替えがきくようなものが良いかもしれません。
5. スキンシップで不安解消「一緒に寝る」時間
【どんなもの?】
すでに自分の部屋で寝ていた子供たちですが、現地校に通い始めてからは、不安が強い時期は親と一緒に寝る日を設けました。
【なぜ効果的?】
日中に多くのストレスや不安を抱えている子供にとって、親との物理的な接触(スキンシップ)は、安心感を取り戻すための非常に有効な手段です。そばにいるだけで、子供は守られていると感じ、リラックスして眠りにつくことができます。
【実践のポイント】
毎晩でなくても、「今日は不安そうだな」と感じた時だけでも効果があります。寝る前にゆっくり絵本を読んだり、今日あったことを話したりする時間にも繋がります。
まとめ:焦らず、子供と向き合う日々
海外の現地校生活は、子供にとっても親にとっても、決して簡単な道のりではありません。言葉の壁、文化の違い、友達関係…乗り越えるべきハードルはたくさんあります。
今回ご紹介したケア方法は、あくまで我が家の例であり、全てのお子さんに当てはまるわけではありません。大切なのは、目の前にいる我が子の様子をよく観察し、その子に合ったサポートを根気強く続けていくことだと痛感しています。
「1年でペラペラ」にならなくても大丈夫。焦らず、比べず、子供が少しずつでも前に進んでいることを認め、励まし続けること。それが、親にできる一番の応援なのかもしれません。
もし今、同じように悩んでいる方がいたら、あなたは一人ではありません。この記事が、少しでも心の支えやヒントになれば嬉しいです。


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